"自己満足"なWebサービスを作らないための5のチェックリスト
近年、多くのWebサービスがリリースされていることは僕が言うまでもない。 それらの中には、流行るものもあれば、まったくヒットしないものも当然存在する。
まったくヒットしないWebサービスのうちいくつかに見受けられるのが、自己満足なWebサービス。 制作者が(故意・過失に関わらず)自分本位で作り、リリースし、そして淘汰されている。
このような自己満足なWebサービスにならないための、僕なりの考えをチェックリストにまとめてみた。 少しでも興味があれば読んでいただければと思う。
注意事項
もしあなたが趣味で、楽しんでWebサービスを作っているのであれば、この記事を読む必要はまったくない。 僕もヒットさせることなど考えずに作るのは大好きだし、今もやっている。
ただ、ヒットさせるために作ろうと考えているなら、ぜひ読んでいただければと思う。
5つのチェックリスト
1. そのWebサービスは自分(達)以外の人にも需要はあるか?
あなたや身の回りで評価された企画でも、それが多くの人に必要とは限らない。 ユーザのニーズを客観的に判断する必要がある。
特に陥りがちなのが、リリースはしたものの仲間内でしか使われないという問題。
あなたの周りには、自然とあなたに似通った性質の人が集まるだろう。 そういった人の意見を1つの意見として参考にするのは良いけど、それがすべてだとは決して思わないようにしなければならない。
2. "○○があること前提"の企画になっていないか?
例えば、以下のようなアイデアがあったとする。 (Evernoteにある僕のアイデア帳から拾ってきた)
Facebookの友達のみに質問・回答可能なQ&Aサービス
このアイデアの場合、仮に初回ログイン時に多くの質問が自分の元へ寄せられ、また自分の質問に対しすぐに友達が回答してくれれば、そのユーザはサービスの利用を継続するだろう。
しかし、これは多くの友達がすでにそのサービスを利用していることが前提となってしまっている。
もちろんこの前提を解決可能な仕組みがあれば大丈夫だ。 前提を前提のままで放置している場合、サービスはうまく回らないだろう。
また、WebサービスがCGM系のサービスの場合、コンテンツの投稿モチベーションと消費モチベーションの両方を満たす必要がある。 どちらか一方が欠けている場合、それは"○○があること前提"状態に陥っている可能性がある。
3. ユーザに使い方を理解させようとしていないか?
企画自体はとても良いのに、UIが少し残念なWebサービスを見かける。 残念な、とは使い方をユーザに理解させようとしているUIである。
UI設計において勘違いしてならないのは、ユーザ≠開発者ということだ。 開発者の都合(好みや思想等)でUIを設計してはならない。
ユーザ自身が意識しなくても目的のアクションを実行できるUIこそ、適切なUIだと言えよう。
UI設計について、Webサービスを作る人であれば以下の本を1度は読んでほしい。
誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)
- 作者: ドナルド・A.ノーマン,D.A.ノーマン,野島久雄
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 1990/02
- メディア: 単行本
- 購入: 32人 クリック: 862回
- この商品を含むブログ (274件) を見る
この本はUI設計においては必読書だと思っている。 (僕の高専時代の指導教官も、東大院時代の指導教官も必読書だと本書を推薦していた)
4. 1発ネタの企画になっていないか?
例えば、以下のような(今となっては黒歴史化された)アイデアがあったとする。
Twitter上で遺憾の意を表明し、その内容に応じて"遺憾ポイント"が付与される遺憾表明サービス
このアイデアの場合、たとえ1度は面白かったとしても、継続して利用するとは考えられない。 Webサービスである以上、それが継続して利用されるかどうかを客観的に判断する必要がある。
なお、上記のアイデアは、僕がまだ大学院1年生だった2年前、夜中酒を飲みながら1人ブレストしているときに出たものだ。 飲酒時に出たアイデアは特に、一度寝かせることをオススメする。
5. 無意味に既存のソーシャルグラフを取り込んでいないか?
開発側からすると、FacebookやTwitter等既存のソーシャルグラフをとりあえず取り込もうとしがちだ。 その方がユーザを多く獲得できると考えられるからである。
しかし、ユーザ側からすると既存のソーシャルグラフがむしろ邪魔になるケースも多い。
例えば、友達にはあまり知られたくない趣味に関するサービスについて。
サービスの独自グラフのみであれば、サービス内での活動内容をシェアすることにより共通の趣味を持つユーザとコミュニケーションを取ることができる。
ここにFacebookのリアルグラフが取り込まれていた場合、気軽に活動内容をシェアできなくなり、結果としてサービスから離れてしまうことが考えられる。
逆もまた然りで、他人には知られたくないのにTwitterのグラフが取り込まれていた場合、これも離脱へと繋がってしまう。
グラフの形成は、サービスの性質に合わせたものにしなければならない。
おわりに
"自己満足"なWebサービスを作らないために、なにより重要なことは、定期的にサービス全体を客観視することだと思う。
Webサービスは、自分の欲求を満たすためではなく、ユーザのために作るものだ。 そのことを忘れさえしなければ、きっとより素晴らしいサービスになるだろう。